お知らせ
ワクチン四方山話です。
1)天然痘
天然痘は罹ると発熱した後で体中に発疹がでて、約50%の人は死んでしまう重い病気です。
治っても発疹のあとが一生残る感染症です。
エジプトの王様(ラムロス5世)もミイラを調査した結果、天然痘に罹って亡くなったといわれています。
2)種痘
いまから200年以上前にイギリス人のジェンナーという人が、天然痘に罹らない方法を最初に開発しました。
その方法は、ある感染症の病気に一度罹ると、そのヒトは免疫ができて一生その病気に罹らないことに注目して、病原性を弱めた天然痘の病原体を人の身体に接種し、ヒトが免疫を獲得してその病気に罹らない様にするという考え方です。これが初めて開発されたワクチンで、種痘と呼ばれています。
その後、世界中で天然痘をワクチンで予防をすることによって天然痘に罹るヒトがいなくなりました。今では天然痘ワクチンを接種する必要がなくなりしました。
3)副反応
その後もいろいろな重い感染症に対してワクチンが開発されました。
しかし、病原性を弱めたり、病原体の一部をヒトの身体に接種するのですから、ヒトにとっては不都合な事をされる訳なので、副反応といわれる様々な有害事象がおきることがあります。
発熱もその一つです。
また天然痘ワクチン(種痘)では、ワクチン接種部位を自分の手で掻いて顔を触ったときにできる「痘痕(あばた)」という跡(瘢痕)も副反応の一つでした。
しかし、いろいろなワクチン接種後に起きる事象が、副反応なのか、そうではないのか、個別には判断が難しいときもあります。ワクチン接種後に起きた事象の全てがワクチンの所為ではないこともあるからです。
例えば、ワクチン接種後に転んで怪我をしたり 交通事故に遭った場合は因果関係はないと考えますが、ワクチン接種後に風邪をひいて熱が出た場合などはどちらが原因で発熱したか判断が難しいときがあります。
4)「メリット・デメリット」と「ワクチン接種の是非(=するかしいないか)」
あるヒトがある感染症に罹ったとき、そのヒトが重症になるか軽症で済むかどうかは、そのヒトが実際に罹ってみなければ判らないことです。
そのため接種して予防するか予防しないかを決めるときは、そのヒトと同じように健康なヒトが、その病気に罹った場合に重くなるヒトが多いのか、軽く済むヒトが多いのかを考えます。
またワクチン接種の「メリット(=効果)」と「デメリット(副反応)」はどちらが多いのかを想像し、ワクチン接種をするかどうかを決めるしかありません。
しかし、どちらも未来予測なので、誰も正確な個別の予測はできません。今はワクチンの種類が多くなりましたが、それでも一つ一つ自分で考えて接種を決めなければならないのです。
ワクチンの種類によって、「定期接種」「任意接種」に別れている理由も、病気の重症度や「メリット・デメリット」の観点が考慮されています。概ね「定期接種」はメリットがデメリットを上回っていると考えて良いと思います。
数十年前の日本では、社会全体のヒトがワクチンを接種すれば、その病気に罹るヒトが減るので、社会全体を守ることができるという観点から、ワクチン接種を「義務」であると法律で定めていた時期がありました。しかし、現在は考え方がかわり、「義務」接種ではなく、「推奨」接種となりました。
つまりワクチンは社会全体を守るためではなく、個人を個別に守るために行うという考え方へ変化しました。そのためワクチン接種をするかしないかは、個人で選択することができますが、個人が選択しなければなりません。
なお、現在、全ての感染症に対してワクチンがある訳ではありません。
研究開発段階中のワクチンもいくつかありますが、多くの風邪は治療しないでも自然に治るか、適切な治療により治る感染症が多いので、「メリット・デメリット」の観点から、ワクチンが開発されていない感染症が多いといえます。逆に現在あるワクチンは、「メリット・デメリット」の観点からメリットが大きいから存在していると考えて良いでしょう。
しかし、重症化する人が多い感染症でワクチンを接種しなくても、罹ったときに軽症で済むヒトもいます。また一生その感染症に罹らないで暮らせる人もいます。それは全て未来予測の事ですから、個別には誰も予測することはできません。
最近では、新型コロナ・ワクチンでも、いろいろな考え方の人が、個別に接種するかしないかで悩みました。
自分のこどもに多種類のワクチンを接種するかしないかを決めることも、良く悩んで保護者が判断していただきたいと思います。
最後にHPVワクチン接種で悩んでいる方に崎山先生の動画を紹介します。
以下のURLからユーチューブをご覧ください。
https://youtu.be/_NP7V16YKT4